食品ECとは?市場規模や課題、成功させるコツについて詳しく解説!

インターネット販売の需要は近年かなり高まっています。
その中でも、食品ECは冷凍技術やパッケージ技術の進歩により、従来利用していなかったユーザーも利用する傾向にあります。

しかし、一方で自分の目で鮮度を確かめたいという消費者も多いのが事実で、ほかの分野と比べて食品ECならではの課題もあります。

そこで今回は、食品ECとはどのようなものなのか、市場規模や課題を解説し、成功させるコツに関してご紹介します。

食品ECとは?

「EC」とは「Electronic Commerce」の略で、日本語にすると「電子商取引」になります。
インターネットを通して行う商品やサービスの取引のことで、ネットショップやネット通販がこれにあたります。

食品ECは大きく以下の3つに分けられます。

  • 食品メーカー・生産者自社サイト
  • ネットスーパー
  • サブスクリプション

1つずつ解説します。

食品メーカー・生産者自社サイト

この取引方法はD2Cともいい、自社が企画し製造した商品を量販店などの小売業者を通さず、ECサイトを用いて直接消費者に販売する方法です。
D2Cとは「Direct to Consumer」を略したもので消費者直越取引という意味になります。

今日のようにネットが普及する前は、メーカーや生産者は従来の商法である卸業者や小売店を通さなければ、商売はできませんでした。
しかし、今日では誰でも容易にECサイトを始められるようになったので、メーカーや生産者がダイレクトに消費者に販売するケースが増えています。

ネットスーパー

ネットスーパーとは、スーパーマーケットがネット上で注文を受けた商品を消費者の自宅まで配送するビジネスモデルです。
現時点では、全国どこでも利用できるというわけではありませんが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、ネットスーパーの利用者は右肩上がりに増加しています。

ネットスーパーは、一般的には実店舗から注文された商品をピックアップして配達しますが、近年では「Amazon Fresh」のように実店舗を持たないネットスーパーも増加傾向です。

サブスクリプション

サブスクリプションというと、動画や音楽配信を思い浮かべる方が多いかもしれません。
定額を支払った消費者に、定期的に商品を配送する、サブスクリプション型の食品ECもあります。
定期的に購入してもらうには、他店との差別化が必要です。

たとえば、有機野菜に特化した定期配送などが挙げられます。 サブスクリプション型の食品ECを始める場合は、十分に競合他社のサービスを調べて、商品者が継続的な購入を考える魅力的な独自のサービスを展開しましょう。

食品ECの市場規模およびEC化率の推移

EC市場全体が拡大中ですが、その中で食品ECについては2019年度で1兆8233億円で十分に需要が大きな市場といえます。

一方で、2020年7月でのB2C食品販売のEC化率は2.89%に留まっています。
国内全体のB2CでのEC化率が6.76%であることを考えると、とても低いといえます。
これは、EC業界における今後の課題であることは言うまでもありませんが、同時に新規開拓の魅力が大きな市場であるともいえるのです。

食品系ECサイトの課題

食品販売のEC化率は、なぜ伸び悩んでいるのでしょうか。 もちろん企業も販路を広げるためにEC化率を上げたいと考えていますが、現状食品販売のEC化は思うように伸びていません。

ここでは、食品ECが抱えている5つの課題について解説します。

利便性・即時性に劣る

ECサイトで買い物をした場合、注文してから商品が届くまで一定の時間が生じます。
食品の場合は消費者にとって「利便性」や「即時性」にかける場合もあります。

例えば、その日に使うものを当日買いたい場合や、料理中に足りない食材があると判明した場合など、食材がすぐに欲しいというニーズには、実店舗にはかないません。
食品ECは、購入者にとって実店舗での購入以上の利便性が感じられないと、購入には結びつけにくいといえるでしょう。

食品は手に取って選びたい需要が根強い

食品は健康に関係する大事なポイントですので、手に取って鮮度の高い商品を購入したいと考える消費者が多くなっています。
つまり、食品ECサイトを運営する際は、消費者に鮮度が高い商品であると伝える必要があります。

消費者が本当に購入してよいと決断できるように、ECサイトのトップページや商品ページに、鮮度や品質についてアピールしましょう。
また、消費者が商品に対して疑問を持ったときに質問できるように、お問い合わせフォームを用意しておきましょう。

ネット事業者の配送料負担の問題

Amazon Primeや楽天市場の「あす楽」など大手通販会社では一定の条件をクリアすれば配送料が無料になりますが、事業者には大きな負担となっています。
消費者にとっては無料ですが、実際には事業者が手数料を肩代わりしているからです。

加えて、保管設備の維持管理、在庫管理、梱包業務、配送手配など、さまざまな固定費や変動費が発生します。

特に食品ECでは、商品によっては冷凍設備が必要な場合もあり、費用がかかる傾向です。
さらに、配送にしても常温・冷蔵・冷凍などの指定が必要で手間のかかる作業です。

保管方法や配送方法の変更は難しいでしょうが、商品管理の効率化を図り、人件費などを削減するのが重要です。

利益を出すのが難しい

家電などほかの商品と比べて、商品は商品単価が安価です。
その反面、在庫管理をはじめ受発注管理、鮮度を落とさないための保存方法など、多くのランニングコストがかかります。
配送エリアを広げる際には、生鮮食品の保存が可能な物流拠点も必要です。

前項でもお話したとおり配送方法も3種類から指定するなど手間がかかります。
運営していく上で必要コストが多い一方、客単価は低めなので、ほかのECサイトと比べて利益が出しにくいという課題があります。

生鮮食品の取り扱いが難しい

ここまでにお話している通り、生鮮食品にとって鮮度が何より重視されます。
この鮮度が商品ECでは課題になりやすいのです。

まずは、保管が難しいという点です。 冷蔵や冷凍設備は大規模なものが多く、自社で設備をしても、外部の冷蔵庫を利用した場合でも、ほかのECサイトと比較して費用がかかります。
また、コストをかけて鮮度を保ったとしても、全国に配送する段階が残っています。
配送時も食品の鮮度が落ちないように、食品に特化した物流拠点が必要です。

ECサイトと相性がよいのは品質が一定であるものです。 家電や衣料品は不良品でもない限りは、どこでどれを買っても品質が一定です。
このような商品はEC販売に適しており、生鮮食品は、この観点から見た場合はECとの相性がよいといえないでしょう。

食品ECサイトを開設する手順

食品ECを立ち上げるには、保健所による営業許可が必要な場合があるので、食品ECならではの通常のECサイトとは異なる手順になります。
ここでは、開設するまでの一般的な手順を紹介します。

食品ECを立ち上げるには、保健所による営業許可が必要な場合があるので、食品ECならではの通常のECサイトとは異なる手順になります。
ここでは、開設するまでの一般的な手順を紹介します。

  1. 営業施設の図面を用意し、保健所への事前相談
  2. 営業許可の申請
  3. 保健所の担当者と日程調整し施設の確認検査の実施
  4. 営業許可の交付を受けサイトの構築
  5. サイトをオープンし営業開始

ただし、上記の流れは一例です。 都道府県により異なる場合がありますので、管轄の保健所に確認してください。

食品ECサイトを成功させるコツ

課題が多い食品ECサイトですが、ECサイトならではのメリットを活かせれば販路を広げられるでしょう。

ここでは、食品ECサイトを成功させるコツを紹介します。

独自性を打ち出す

成功しているECサイトの特徴として、商品の魅力が重要です。
特に独自性や限定品というような、このお店でなければ買えないというような特徴のあるECサイトが多いです。
日頃購入するのが難しい商品を販売することで、実店舗との差別化を図れます。

一年中同じ限定品を販売するのではなく、季節ごとに取り扱い商材を変えるなどすると、消費者がサイトを訪問する回数も増えるでしょう。

また、安全性にこだわった食品や、料理を手軽に作れる食材のセットなど独自性を打ち出すことも大切です。

リピーター率の増加

食品ECサイトで大切なのは、リピート率を高めリピーターを増やすことです。
キャンペーンを行う、サブスクリプションのサービス、メールマガジンを配信するなど各施策に注力しリピート率を高めなければなりません。
会員機能を用いて、ランクが上がるとクーポンを配布するなどの施策を行うのもよいでしょう。

また、リピーター率を増加するためには、消費者からの信頼感を得る必要があります。 商品ページを充実させたり、分かりやすい問い合わせフォームを準備するなど、安心して利用できるサイトを構築しなければなりません。

サイトの利便性を高める

ECサイトを立ち上げる場合、購入しようと思った商品を円滑に購入できるように、使いやすいサイトを作るのが大切です。
どんなに凝っているデザインのサイトを構築しても、購入に至るまでのプロセスが分かりにくいと、購入せずに離脱してしまいます。

そのため、「欲しい商品をすぐに見つけられる」「決済画面まで円滑に到達できる」など消費者にとって買いやすいサイトにする必要があります。

物流業務を円滑にする

重いものや大きいものなど、手で持ち帰るのが大変なものを配達できるシステムを確立しましょう。
食品ECは課題がたくさんあるからこそ、物流面では、ユーザーに食品ECを利用してみようと思ってもらえる取り組みが大切です。

しかし、受注数が増えてくると担当者の数によっては対応しきれなくなるケースがあります。
自社に物流ノウハウが不足している場合には、物流システムを導入したり、アウトソーシングするとよいでしょう。

SNSを活用する

実店舗でもTVCMを始めとする広告などのマーケティング施策を行うと集客できるのと同じように。ECサイトでもマーケティング施策を行わなければなりません。

施策の中心となるのは、商品情報の発信およびプロモーションなどをSNSを活用して消費者との接点を作る施策があります。

ほかには、消費者がSNS上に投稿した内容を活用する、ユーザーレビューをECサイト上に掲載する方法もあります。

ギフトEC向け商品・機能の強化

食品ECで成功しているサイトの多くは、ギフト商品を扱っています。
売上に対しギフト商品の割合が高いサイトでは、目立つところにアイコンや説明を表示し分かりやすさを前面に押し出しています。

一方で、ギフト、自家用の割合が同様のサイトでは、ギフト商品はあまり前面に出さずに「このサイトの買い物方法」などに説明を加えています。
消費者がお気に入りの商品を見つけても、わかりにくいと離脱してしまうことも考えられます。 消費者の特性に合わせた分かりやすいサイト作りが大切です。

食品ECサイトを開設することによるメリット

課題もある食品ECサイトですが、もちろん実店舗にはないさまざまなメリットがあります。
ここでは、事業者、消費者それぞれの目線で見たメリットを解説します。

事業者が得られるメリット

まずは、食品ECサイトを開設することによる事業者が得られるメリットを3つ紹介します。

  • 営業時間の制限がないので受注機会を増やせる
  • 商圏・販路を大幅に広げられる
  • ユーザーに商品の魅力を直接届けられる

1つずつ解説します。

営業時間の制限がないので受注機会を増やせる

食品ECサイトだけではなく、ECサイト全体のメリットですが、サイトを構築すれば営業時間の制限がなく注文を受け付けられるのは、とても大きなメリットです。

コンビニや24時間営業のスーパーでなくても、消費者が欲しいと思ったときに注文できるので、受注機会を増やせます。

SNSなどを活用して認知されるようになれば、全国から注文が入る店舗になる可能性もあります。

実店舗を営業しながら食品ECを始める場合は、ECサイト限定商品などを販売すると実店舗の顧客が購入してくれる可能性が高まります。

商圏・販路を大幅に広げられる

ECサイトはいつでも、どこにいても商品を注文できるメリットがあります。
従来、地元の消費者をターゲットにしていた事業者も、食品ECであれば、従来顧客になり得なかった消費者を取り込むことが可能です。

ECの強みを活かし、これまでターゲットにできなかった全国の消費者にインターネットを介してアプローチが可能になります。
そのため商圏を日本全国に広げることが可能です。

ユーザーに商品の魅力を直接届けられる

ECサイトの場合は商品ごとに詳細ページを用意することができるので、商品情報はもちろん、生産者からのメッセージなど商品独自の魅力を直接消費者に届けることも可能です。

メッセージ性が強いものは消費者の購買意欲をかき立てます。
例えば、スーパーで生産者が顔を出して販売されている野菜とただ「◯◯産」とだけ表示されている野菜が並んでいるときに、前者が売れるのと同様です。

ユーザーが得られるメリット

食品とECは相性がよくないとされながらも、近年食品ECは注目を浴びています。
ここでは、その理由にもなる以下の3つのメリットを解説します。

  • 日常生活の利便性が増す
  • 在庫切れを起こさない
  • 遠方からの取り寄せが可能

1つずつ解説します。

日常生活の利便性が増す

ECサイトで毎日の生活で使用する食材を購入できれば、店舗までの往復する分の時間を節約できます。
また、家で待っていれば商品が届くので、購入品を運ぶ必要がありません。
これは高齢者はもちろん主婦にとっても大きなメリットです。

また、欲しい商品を検索して素早くカートに入れられるので早くて簡単ですし、冷蔵庫の中を見ながら注文可能なので、節約にもつながります。

また天候に左右されることがありませんし、道路状況に影響されない点もメリットの1つです。

在庫切れを起こさない

自宅の近所に小さな量販店しかなく、欲しかった商品が売り切れで買えなかった経験を持つ方もいると思います。
台風などの非常時の際は、生活必需品や飲料水、レトルトを始めとするインスタント食品などの買いだめがおきて欠品になることもあります。

インターネットを使えれば、複数のECサイトから在庫のある店舗を探して注文できます。
そのため、基本的に在庫切れは起きません。

遠方からの取り寄せが可能

新型コロナ感染症での外出自粛ムード以降、自宅で地方の美味しいものを食べたいという方が増えました。
食品ECサイトであれば、住んでいる地域に関わらず、出品されているほぼすべての商品が購入できるのも大きなメリットです。

旅行先で食べたものや、TVなどで紹介されていて欲しくなった遠方の品物もECサイトを利用すれば、簡単に手に入れることができます。
地域性が強く、手に入りづらいものは食品であってもECサイトで成功しています。

食品ECサイト売上高ランキング

食品EC業界の売上はどの企業のECサイトが多いのでしょう?
ここでは2023年最新の食品EC・ネット通販売上高ランキング(Neri Marketing)からベスト3を見ていきます。

1位:アマゾン

日本で一番食品が売れているECサイトはアマゾンで、売上高は500億円です。
アマゾンは誰でも商品を出品できるサイトで、食品だけではなく多くの商品が販売されています。
翌日配送や送料無料など、消費者が使いやすいサイトとして非常に人気があります。

日本でアマゾンのシェアは20%を超えていて、シェア率は国内1位となっています。
このシェア率から考えると、日本でネット通販で何か購入しようとした場合、最初にアマゾンを開くという方が非常に多いでしょう。
これから食品ECサイトでの販売を検討されている方は、アマゾンに出品するのは非常に良い選択といえます。

2位:イトーヨーカ堂

2位はネットスーパーが順調に推移しているイトーヨーカ堂で売上高は426.8億円です。
店舗で販売している商品以外にネットスーパー限定のオリジナル商品もあり、取り扱いアイテム数は約3万点です。

配送は当日から7日後まで指定でき、購入者のニーズに合った形態であることもメリットといえます。

妊婦や乳幼児がいる家庭は登録から4年間は、配送料が半額になるサービスもあり、外出が難しい家庭にも利用しやすいECサイトです。

3位:オイシックス・ラ・大地

3位は前年と比べて19.4%も増加しているオイシックス・ラ・大地で296.1億円です。
オイシックスの主力商材はミールキットです。

オイシックスは、近所で購入しにくい有機野菜や無農薬野菜をネットで購入できる点や配達日時を選べる点、野菜を自由に選べる点など利便性の高いサービスを実施しています。
最終的には主力商材である定期購入のミールキットでリピーターを得ています。

まとめ

国内のEC市場は年々拡大を続けています。
しかし、食品ECはEC化率・市場規模ともに順調に拡大しているとはいい難い状況です。
それでも、着実に成果を上げている事業者は存在します。

食品ECは取り扱いが難しい分野ですが、反面上手に取り込めれば成果を上げることも期待できます。

今回紹介した成功するためのコツや事例、メリットなどを参考にして、食品ECの構築を検討してみてください。

 

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