市場成長率とは?計算方法や重要性・PPM分析についてわかりやすく解説

ビジネスにおいて新しい事業を立ち上げる際に、その市場の需要が伸びているのか縮小しているのかはとても大事な情報です。

市場成長率を求めることで、その事業の将来性がある程度予想できるようになります。

また、市場占有率を組み合わせてPPM分析に活用すれば、自社の事業がそれぞれどのような成長段階にあり、資金や人材をどの配分で振り分けるべきかまで判断可能です。

この記事では、市場成長率とは何かや計算方法、PPM分析について知りたい方にむけて市場成長率の意味と計算方法、重要性について解説しています。

市場成長率と市場占有率を使ってできるPPM分析についてもわかりやすく説明しているので、ぜひ参考にしてください。

市場成長率とは?

市場成長率とは、ある事業や商品の市場規模が前年と比べてどのくらい大きくなったかを割合で表したものです。市場成長率は以下の計算式で求められます。

「市場成長率=今年の市場規模÷前年の市場規模」

市場成長率は単独でも市場が大きくなっているのか反対に小さくなっているのかわかりますが、相対的市場シェアと組み合わせてPPM分析をすれば、より具体的に対象の事業の将来性が判断できます。

市場規模の調べ方

市場成長率を求めるために必要な市場規模は、特定の市場の年間売上から自分で調べることが可能です。ここでは、市場規模の具体的な調べ方について解説します。

①官公庁が公表するデータで調べる

市場規模の1つめの調べ方は、官公庁が独自に調査し公表しているデータを使う方法です。

たとえば、経済産業省の工業統計調査では産業、地域、品目別の統計データが出ているので、製造業、小売業、サービス産業などの市場規模が調べられます。(※2022年度からは工業統計調査ではなく経済構造実態調査に変更)

また、財務省の法人企業統計調査では製造業、非製造業など各業種別に資産、負債及び純資産、損益などの統計データが年次別と四半期別で調べられ、総務省の情報通信白書ではICTに関する業界の市場規模データを調べることが可能です。

政府から出ている統計データのほとんどは総合窓口であるe-Statで閲覧できます。探したいデータがどの省庁から出ているかわからなくても検索できるため、e-Statで探すのがおすすめです。

②業界団体が公表するデータで調べる

市場規模は業界団体が公表するデータで調べることも可能です。

データを公表している業界団体は、たとえば以下のような業界団体があります。

官公庁の公開しているデータは、調べる範囲が広いため公開までに時間が掛かるのです。

四半期よりも短い期間のデータやある商品のデータといったピンポイントの情報を見たいときや細心の情報が欲しいときは、業界団体の公表しているデータから調べましょう。

探している製品分野の団体が見つからなくても関連している団体を探すと、参考となるデータが見つかる可能性があります。

③調査会社のデータを購入する

調査会社のデータを購入することでも市場規模を調べることが可能です。

調査会社では、パートナー企業からのデータや各企業が公開している財務状況など投資家向けの情報、区官庁の統計などをもとに専門のレポートを作成しています。

無料トライアルを実施していたり、サンプル資料も載っているので確認してみてはいかがでしょうか。

官公庁や業界団体のデータを調べるのに時間がかかるので、すぐに結果を知りたい方や正確なデータが欲しい方は調査会社のデータを購入するのがおすすめです。

市場規模のデータが得られる調査会社には以下のような会社があります。

④調査会社に依頼して調べてもらう

調査会社に依頼して調べてもらうのも市場規模を調べる効果的な方法です。

市場調査を専門に行っている企業では、受託調査も行っており調べたい項目がピンポイントでわかります。

たとえば、業界動向調査では市場規模以外に参入企業・企業占有率などがわかるだけでなく、他にも販路状況調査や先行企業の動向調査も可能です。

無料で見られるデータや会員登録することで依頼前に受託調査に関する事例集が見られるので、ぜひ参考にしてみてください。

市場調査を専門に行っている企業には以下のような企業があります。

市場規模の算出方法

市場規模を知りたいと思っても具体的なデータが載っているケースは少ないですが、自分でも算出が可能です。

具体的な方法を解説していきますので、参考にしてください。

算出方法①企業から得られる情報を元に調べる

市場規模は企業から得られる情報を元に調べることができます。具体的な方法は以下の2つです。

  • 年間総売上と市場占有率から調べる方法
  • 市場に参加している企業の数と平均売上から調べる方法

それぞれ解説していきます。

1つめは、年間総売上と市場占有率から調べる方法です。

A社の市場規模が知りたい場合、年間総売上と市場占有率(シェア)の2つを使うことでわかります。具体的な計算式は以下のとおりです。

「A社の市場規模=A社の年間総売上÷A社のシェア」

たとえば、A社の年間総売上が180億円、市場占有率が30%の場合、A社の市場規模はおよそ600億円になります。

600億(A社の市場規模)=180億(A社の年間総売上)÷0.3(A社のシェア)

上記の計算式に当てはめれば、他の企業の市場占有率しかわからなくても市場規模が算出できます。

2つめは、市場に参加している企業の数と平均売上から調べる方法です。

市場に参加している企業の数と1社あたりの年間総売上の平均がわかっているのであれば次の計算式でだいたいの市場規模がもとめられます。

「市場参加企業数 × 年間総売上平均 = 市場規模」

たとえば、市場参加企業数が500社で、その業界の1社の平均売上金額が1億の場合、だいたいの市場規模は500億になります。

算出方法②消費者から得られる情報を元に調べる

特定の業界や商品の利用者数、顧客単価、利用頻度からもだいたいの市場規模が算出可能です。

たとえば、ある商品の利用者数が5000万人、顧客単価が200円、利用頻度が月2回(年24回)の場合、市場規模は2400億円になります。

5000万人(利用者数)×200円(顧客単価)×24回(利用頻度)=2400億円(市場規模)

算出方法③フェルミ推定から調べる

企業と消費者どちらから得られる情報でも市場規模が求められない場合、フェルミ推定を使うことで市場規模が調べられます。

フェルミ推定とは、「日本に交差点はいくつあるか」「世界中で今電話している人の数」など一見すると答えの求めようがない問題を論理的思考にのっとって概算することです。

フェルミ推定の正解は決まっていませんが現実離れした答えになっては意味がないので、人口:1.2億人、世帯:5,000万世帯、国土面積:約40万平方kmのような大まかなデータを元に考えます。

市場規模を調べる場合は、対象となる商品や施設などの利用者数、購入者数、人口、世帯数、1回あたりの購入金額、利用頻度などを使うといいでしょう。

特定の事業や商品でフェルミ推定に使えそうな数字が見つからないときは、似た商品や同じカテゴリーの数値を参考にしたり、実生活から得た情報を数字にして計算します。

フェルミ推定で出した市場規模は使う数字次第で変わるので、どの情報を選ぶかが重要です。また、導き出された結果も概算であることに注意しましょう。

市場成長率を求める重要性

市場成長率を求めると特定の市場の将来性がわかります。

たとえば、自社で新規事業を立ち上げようとしたとき市場成長率が90%であれば衰退し始めている市場なので立ち上げはやめようという判断が可能です。

さらに市場占有率と組み合わせることでPPM分析ができ、市場の将来性だけでなく資金の配分や現状、改善策まで考えることができます。

市場成長率を求めるとPPM分析によって論理的に特定の市場の方向性を定められ、自社の利益につながるのです。

市場成長率の基本と理解

市場成長率は、ビジネス戦略や投資判断において不可欠な要素です。
この数値は、特定の市場や産業が一定期間内にどの程度成長したかを示し、企業や投資家が意思決定を行う際の重要な情報源となります。

市場成長率単体では市場の動向を把握できますが、相対的市場シェアと組み合わせてPPM分析を行うことで、対象事業の将来性をより具体的に評価できます。
市場規模を把握するために必要なデータは、特定の市場の年間売上から独自に収集可能です。
具体的な方法は以下の通りです。

  • 官公庁が公表するデータを調査する。
  • 業界団体が公表するデータを調査する。
  • 調査会社のデータを購入する。
  • 調査会社に依頼してデータを収集する。

市場成長率の分析

市場成長率の分析は、ビジネス戦略や投資判断において非常に重要です。
市場成長率の分析についての要点は以下のとおりです。

  • 市場成長率の定義:市場成長率は、特定の市場や産業が一定の期間内に成長した割合を示します。通常、売上高や収益の増加率として計算されます。
  • 意義と重要性:市場成長率は、市場の健全性や将来性を評価するための重要な指標です。ビジネス戦略の策定や投資判断の際に、市場の成長率を理解することは不可欠です。
  • 市場の拡大と縮小:成長率がプラスの場合、市場は拡大しており、新しい機会や需要が生まれていることを示します。一方、マイナスの成長率は市場の縮小を意味し、競争の激化や需要の低迷が考えられます。
  • 影響要因:市場成長率は、さまざまな要因に影響されます。経済状況、技術革新、消費者のニーズ変化、競合他社の動向などが市場の成長率に影響を与えます。
  • 競合分析:市場成長率を分析する際には、競合他社の動向や市場シェアの変化も考慮する必要があります。競合分析を通じて、自社のポジショニングや競争戦略を適切に立てることが重要です。
  • 将来予測:市場成長率の分析から得られる情報を元に、将来の市場動向を予測することが可能です。この予測を基に、企業は戦略的な方針を立て、市場における競争力を維持・強化していきます。

市場成長率の分析は、市場の動向を理解し、ビジネスの戦略的な方針を決定する上で欠かせない要素です。
企業や投資家は、市場成長率を継続的にモニタリングし、適切な行動を取ることが求められます。

市場成長率の動向:現在と将来の展望

市場成長率は、一定期間内に市場規模がどれだけ拡大したかを示す指標です。
市場成長率が高いほど、その市場が拡大していることを意味します。
市場成長率の動向に関する現在と将来の展望について解説します。

現在
2022年現在、世界の市場成長率は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で一時的に低下しました。
世界経済の回復に伴い、現在は徐々に回復基調にあります。

ただし、2022年の3.5%から、2023年は3.0%、2024年は2.9%と、歴史的平均である3.8%を大幅に下回る見込みです。
先進国の成長率も2022年の2.6%から、2023年は1.5%、2024年は1.4%に鈍化する見通しです。

日本経済はデフレ脱却の重要局面にあり、賃上げ、価格転嫁、生産性上昇が鍵となっています。

将来
将来の市場成長率は、複数の要因によって影響を受けます。
経済成長、人口動態、技術革新などがその主な要因です。
これらの要素を考慮すると、今後も市場成長率は緩やかに拡大すると予想されます。

ただし、2023年の世界経済は底堅い成長を維持しつつも、先行きの不確実性が高まる見込みです。
2024年の世界経済の成長率は2.4%で、3年連続の減速が予想されます。日本経済は中長期的に課題を抱えており、特に人口減少と高齢化が深刻な問題となっています。
2021年度から2025年度の実質GDP成長率は、平均で+1.3%と高い伸びを示しますが、コロナ禍の反動もあり、2023年以降は平均で+0.5%と緩やかな伸びにとどまる見込みです。

市場成長率を上げる戦略的アプローチ

市場成長率を上げるためには、戦略的なアプローチが必要です。以下に、市場成長率を上げるための戦略的アプローチをまとめます。

  • 市場開拓と新規顧客獲得:新しい市場セグメントや地域に進出し、新規顧客を獲得することで市場を拡大します。市場調査を行い、需要の高い領域や顧客のニーズを理解し、それに応じた製品やサービスを提供します。これは、既存の市場において、競合が強すぎて思うように売上がでない場合や市場が飽和していて売れ行きが頭打ち状態の場合に新しい市場を開拓し、売上を伸ばす戦略です.。
  • 製品・サービスの革新と差別化:競合他社との差別化を図るために、製品やサービスの革新を行います。顧客のニーズや市場の動向を常に把握し、それに基づいて製品やサービスの改善を行うことで、市場での競争力を強化します。これは、自社が今まで開拓してきた既存の市場へ向けて、新しい製品やサービスを投入し、売上拡大や新たな顧客の獲得を目指す戦略です。
  • マーケティングとブランディングの強化:強力なマーケティング戦略を展開し、ブランドの認知度を高めることで、市場成長率を促進します。ターゲット市場に対する適切なプロモーションや広告活動、デジタルマーケティングの活用などが重要です。
  • 顧客満足度の向上とロイヤルティの構築:顧客満足度を向上させ、顧客との長期的な関係を築くことで、市場成長率を高めることができます。顧客のフィードバックを収集し、製品やサービスの改善を行い、顧客ロイヤルティを高める取り組みが必要です。
  • パートナーシップやアライアンスの構築:業界内外のパートナーシップやアライアンスを築くことで、新たなビジネスチャンスを創出し、市場の成長を促進します。他社や関連産業との協力関係を構築し、共同プロジェクトや共同販売などの取り組みを推進します。
  • 技術革新とデジタル化の促進:技術革新とデジタル化を積極的に取り入れることで、市場の成長を加速させることが可能です。最新の技術やデジタルツールを活用し、効率性や顧客体験の向上を図ります。

これらの戦略的アプローチを組み合わせ、市場成長率を持続的に上げるための継続的な取り組みが必要です。市場の動向や競合状況を常に把握し、柔軟に対応することが成功の鍵となります。

市場成長率を読み解くための3つのポイント

市場成長率は、一定期間内に市場規模がどれだけ変動したかを示す指標です。
企業は市場成長率を把握することで、自社の事業戦略を立案したり、競合他社の動向を分析したりすることができます。

市場成長率を理解するには、以下の3つのポイントに留意する必要があります。

  • 市場成長率はあくまでも過去の値を表すものである
  • 市場成長率は市場の規模や種類によって異なる
  • 市場成長率は将来の予測である

詳しく解説します。

市場成長率はあくまでも過去の値を表すものである

市場成長率は、過去のデータを示す指標です。
したがって、現在の市場状況を正確に把握するには、直近の市場成長率だけでなく、過去のデータも検討する必要があります。

市場成長率は市場の規模や種類によって異なる

市場成長率は、市場の性質や規模によって大きく異なります。
新興市場や成長産業では高い傾向が見られる一方、成熟市場や衰退産業では低い傾向があります。

市場成長率は将来の予測である

市場成長率は将来の予測を示すものです。
そのため、実際の市場状況との違いが生じる可能性があります。
市場成長率を参考にする際には、前提条件やリスクを十分に理解することが重要です。

これらのポイントを踏まえて、市場成長率を適切に解釈し、戦略的な意思決定を行うことが求められます。

市場成長率の活用法

市場成長率は、企業や投資家がビジネス戦略や投資判断を行う際に重要な情報源となります。
市場成長率の活用法について解説します。

市場のポテンシャルの評価

市場成長率は、特定の市場や産業が一定期間内に成長した割合を示すため、市場のポテンシャルを評価するのに役立ちます。
高い成長率の市場は、新たなビジネスチャンスや投資機会が存在する可能性があります。

事業戦略の立案と評価

企業は市場成長率を考慮して自社の事業戦略を立案および評価します。
成長率の高い市場に参入するか、競合の少ないニッチ市場に注力するかなど、戦略的な選択を行う際に重要な指標です。

投資判断の裏付け

投資家は、市場成長率を分析して投資判断を裏付けます。
成長率の高い市場や業界に投資することで、リターンの可能性を高めることができます。

競合分析とポジショニング

市場成長率を比較することで、競合他社の動向やポジショニングを分析できます。
成長率の高い競合企業に対抗するために、自社の戦略を見直すことが求められます。

新規市場参入の判断

市場成長率を分析して、新規市場に参入するかどうかを判断します。
成長率の高い市場や、将来的な拡大が見込まれる市場に参入することで、企業の成長を促進することができます。

ビジネスモデルの最適化

市場成長率の分析は、ビジネスモデルの最適化にも役立ちます。
市場の成長率に応じて、製品やサービスの提供方法や価格設定を調整することで、競争力を強化し、成長を促進します。

これらの活用法を通じて、市場成長率は企業や投資家にとって重要な戦略的指標となるでしょう。

PPM分析とは?

PPM分析とは、市場成長率を縦軸に市場占有率を横軸に当てはめ事業や製品を4つのポジションにわけることで、限られた資金を効果的に各事業に配分するためのフレームワークです。

PPM分析では縦軸と横軸で区切られた4つのスペースにそれぞれ以下のような名前がついています。

  • 花形(Star)
  • 金のなる木(Cash Cow)
  • 問題児(Problem Child)
  • 負け犬(Dog)

自社事業を4つのポジションに分ければ、特定の事業が現状どのような状態にあって今後利益拡大が見込めるのかや、資金をどの程度かける必要があるのか判断可能です。

PPM分析の4つのフェーズ

PPM分析には花形、金のなる木、問題児、負け犬の4つの段階があります。

花形

花形は市場占有率も市場成長率も高い段階です。

事業が成長途中で投資を続ければさらなる利益と売上が期待できる事業があてはまります。

今後も成長が見込まれる事業で、競争が激しい傾向にあるので他社に負けないために設備や宣伝への積極的な投資が必要です。

次の段階として「金のなる木」に移行し、安定して利益を得られることが課題になります。

金のなる木

金のなる木は市場占有率は高いが市場成長率は低い段階です。

市場占有率が高いのであまり投資しなくても利益や売上が得られますが、今後市場が伸びていくことはないので成長は期待できません。

金のなる木はすでに十分に利益を得られている状態なので、新しい投資をするのではなく発生した利益を他の事業に回す方がいいです。

現状をいかに維持するかが大切ですが、今後「負け犬」に移行する可能性があり撤退の時期を考え始める必要があります。

問題児

問題児は市場占有率が低く市場成長率の高い段階です。

立ち上げたばかりの事業や新しい製品が問題児にあてはまります。

事業でも製品でも売り始めてすぐは需要が高まっておらず、売上はないのに広告費はかかるため赤字になりやすいです。

赤字だからといって撤退するべきとの判断は早く、需要が高まり市場規模が大きくなれば将来は「金のなる木」や「花形」に移行する可能性があります。

将来利益を生むために積極的な投資が必要な段階です。

しかし、成長することなく「負け犬」に移行するパターンもあります。

負け犬

負け犬は市場占有率も市場成長率も低い段階です。

「金のなる木」や「問題児」から移行してくる事業があてはまります。

売上が落ちてきて、今後利益が拡大する見込みもないので撤退の時期を考えることが必要です。

投資は行わず、発生した利益を「問題児」や「花形」に回すことで企業にとっての利益につながります。

PPM分析のメリット

PPM分析のメリットは5つあります。

資金の最適な配分がわかる

1つめのメリットは、4つのフェーズに分けることで資金の最適な配分がわかることです。使える資金には限りがあるので、どこにどれくらい振り分けるかがポイントになります。

たとえば、縮小傾向にある事業に投資を続けてしまったり成長する事業に十分に資金を回せないと、得られたはずの利益を逃したりしなくていい損失をすることになりもったいないです。

PPM分析を使えば、これから伸びる事業が市場成長率と市場占有率の数値で表せるので、的確に資金配分の判断ができます。

経営戦略が立てやすい

2つめのメリットは、事業の将来性がわかるため経営戦略が立てやすいことです。4つのフェーズに分かれると将来の傾向と対策がわかります。

たとえば、赤字だから撤退するべきか考えていた事業が問題児に当てはまるのであれば、これから需要が高まるので積極的な投資をすることで利益が増えるでしょう。

黒字の事業でも金のなる木に当てはまる場合は、これ以上伸びる可能性は低いので投資は抑えて現状維持をめざし、撤退の時期を考えることが必要です。

単純に売上や利益だけで判断するのではなく、将来性を見て判断できるので効率よく複数の事業を伸ばすことにつながります。

各事業の将来性を見極められる

PPM分析では図を作成するので、各事業現在の「フェーズ」がひとめで分かります。
そのため、財務諸表や各種報告書などの数字や文章だけでは判断が難しいケースでも、どの事業が将来性があるのかが、即座に分かります。

結果的に収益性が低く成長も見込めない事業を洗い出せるので撤退時期の予測も立てられるのです。
一方で、現時点では収益性が低いものの、将来的に成長が期待される事業も存在します。

このようにPPM分析を通せば事業の将来性を図れます。

将来性のある事業に対しては、積極的に資金を投入するべきです。
作成した図を見てもらえば、上司や同僚からの賛同が得やすくなるでしょう。

事業方針を軌道修正できる

PPM分析は、投資価値のある事業活動を特定する機会です。
成長が見込めない事業は撤退や売却するなど、事業方針を軌道修正する際に活用できます。

逆に市場成長率が高い事業に対しては、さらに投資をおこない市場占有率を高めることも可能です。

投資価値のある事業がわかる

PPM分析を利用すると、自社の各事業の立ち位置を把握できます。
具体的には、PPM分析を通じて市場成長率を把握することで、追加投資の是非や他の事業への投資検討が可能となり、結果的にコストの浪費を削減できるのです。

数字だけで利益や損失を判断するのではなく、PPM分析を通じて異なる視点から再考することで、価値の本質が明確になり、誤った判断を避けることができます。

多角化企業にとって、多くの事業を展開する中で、投資する事業の選択や投資を集中させる事業を明確化することは、今後の経営に大きく影響します。
PPM分析を行うことで、これらの課題に対処することが可能です。

PPM分析のデメリット

PPM分析のデメリットは3つあります。

新たな発見やアイデアにつながりにくい

1つめのデメリットは、PPM分析は今ある事業の分析に使われるため新しい発見やアイデアにつながりにくいことです。

市場占有率が低い場合、大きな利益は得られないと考えるのが普通ですが、今までにない技術を取り入れた商品が一気にシェアを拡大することもあります。

分析結果のみにとらわれない発想も必要です。

使う数字によって結果が変わる

2つめのデメリットは、どの数字を使うかによって結果が変わることです。

実際の事業や商品はひとつの分野にのみ属しているわけではありません。いくつもの分野に関わってると、どこを競合とするかどの分野で分析するかで結果が変わるのです。

PPM分析を活用し事業の将来性を判断するための正しい数字を見つけましょう。

破壊的イノベーションを見落とす

PPM分析は累積生産量の増加で一定率のコストが下がる経験効果や一定の設備による生産量の増加でコストが下がる規模の経済、製品ライフサイクルの存在を前提とした分析手法です。

しかし、市場や競争環境は常時変化しており、新たな需要や技術の進化などによって、破壊的なイノベーションが生じる可能性があります。

つまり、PPM分析のみでは既存の事業や商品しか分析できないので、将来的な事業および将来の戦略を立てるには向いていません。

市場成長率や市場占有率が低い事業でも、革新的な技術で一気に集積性のあるビジネスモデルを構築し高いシェアを得るケースも存在します。
PPM分析に頼りすぎてしまうと、チャンスを逃してしまうおそれも否定できません。

PPM分析のやり方

PPM分析とは、Portfolio Management Matrixの略で、事業ポートフォリオの分析手法です。 自社の事業を、市場成長率と市場占有率の2つの要素に基づいて4つのポジションに分類し、事業の将来性や経営戦略の策定に役立てます。
次に、PPM分析の具体的な手法について解説します。

分析方法は大きく分けて以下の3つのステップです。

  1. 市場成長率を求める
  2. 市場占有率を求める
  3. 自社事業の立ち位置の確認

詳しい内容を見ていきましょう。

市場成長率を求める

PPM分析を進めるには、各種数字を取得する必要があります。
まず始めに、該当事業が所属する市場の成長率を算出します。
市場成長率は、市場規模が前年に比べてどれだけ増加したかを示す割合です。

市場成長率の求め方は、今年の市場規模を前年の市場規模で割ることです。
例えば、2022年の市場規模が10億円で、2021年の市場規模が8億円だった場合、10億円を8億円で割ると1.25になり、市場が25%拡大したことになります。

国やその他の機関が発表したデータなどを活用し、各種数字を取得してください。
市場規模に関する情報は、経済産業省の経済構造実態調査や業界団体のデータ、矢野経済研究所などのウェブサイトで入手できます。

市場占有率を求める

市場占有率は、市場規模に対する売上高の割合で計算されます。
市場占有率を計算する際に重要なのは、競合他社の売上高も含めて考慮することです。

自社の売上高は、会計情報から入手できます。
競合他社の売上高は、一部上場企業の場合は有価証券報告書から把握可能です。
また、特定の業界の市場占有率は、公開されているウェブサイトで入手できる場合もあります。

競合他社との比較を行うためには、相対的市場占有率という指標も使用されます。
相対的市場占有率の求め方は以下の通りです。

相対的市場占有率 = 自社の絶対的市場占有率 ÷ 業界トップの絶対的市場占有率

相対的市場占有率は、自社が業界トップ企業と比較してどれだけの強さを持つかを示す指標です。
相対的市場占有率が1以上であれば、自社が業界トップの地位にあることを示します。

自社事業の立ち位置の確認

自社事業のポジショニングの確認は、市場成長率と市場占有率の両方を考慮して、先述した「花形(Star)・金のなる木(Cash Cow)・問題児(Problem Child)・負け犬(Dog)の4つのポジションに分類されます。

自社事業のポジションを把握した上で、競合他社との比較を行います。
自社事業がどのポジションに位置しているかを把握することで、競争優位性を高める戦略を策定可能です。

まとめ

今回は市場成長率の計算方法や重要性、PPM分析について解説してきました。

この記事のポイントは以下のとおりです。

  • 市場成長率とは、ある事業や商品の市場規模が前年と比べてどのくらい大きくなったかを割合で表したもの
  • 市場規模は官公庁の公表するデータ、業界団体の公表するデータ、調査会社から購入したデータの利用か調査会社に依頼することで調べられる
  • 市場規模の算出方法は、企業もしくは消費者から得られる情報を使う、フェルミ推定の3つ
  • 市場成長率を求めると特定の市場の将来性がわかる
  • PPM分析とは、市場成長率と市場占有率を使って事業の方向性や投資配分を知るための方法
  • PPM分析のメリットは、資金の最適な配分がわかることと経営戦略が立てやすいこと。デメリットは、新たな発見やアイデアにつながりにくいことと使う数字によって結果が変わること

市場成長率やPPM分析を使う際には、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

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