日本・海外のDX成功事例33選!メリット・デメリットや推進ポイントも解説

2018年に経済産業省から発表された「DXレポート」をきっかけに、多くの企業でDX化が推進されています。しかし、以下のように感じている方もいるのではないでしょうか。

  • そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)って何?
  • 会社でどんなことに取り組めばいいの?
  • DXにはどんな成功事例があるの?

言葉はたくさん目にするようになったDXですが、まだまだよくわからない方も多いでしょう。

この記事では、経済産業省が「DX銘柄2023」に選定した企業を中心に日本企業・中小企業・海外企業の事例を紹介します。

メリットやデメリット、推進のポイントも解説するので、DXについて知りたい方はぜひ参考にしてください。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

DXとは、企業がビジネス環境の激しい変化に対応できるよう自社の新たな価値の創出を通して競争上の優位性を確立することです。

たとえば、後述する不動産業の事例ではコロナ禍という環境の変化に対して、非接触型の接客に取り組みデジタルツイン(PC上にリアル空間を再現する技術)を活用したオンライン物件見学を始めました。従来と比べ多彩なシミュレーションが可能となったため、モデルルーム見学と同等以上の体験価値を提供できたそうです。

DXが進められるようになった背景には、少子高齢化による国内需要の減少、労働力不足、国際競争力の低下などがあり、日本企業が国際競争力を高めると同時に日本全体での経済成長がDXの目的といえます。

経済産業省が2022年に改定した「デジタルガバナンス・コード2.0」(旧 DX推進ガイドライン)での定義は以下の通りです。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

引用:デジタルガバナンス・コード2.0

デジタル化やIT化と混同されやすいですが、デジタル化やIT化が業務の効率化を図る手段であるのに対し、デジタル化やIT化を活用してビジネスモデルの抜本的な変革を行うのがDXです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進できている状態とは?

DXを推進できている状態とは、「ビジョン・ビジネスモデル」「戦略」「成果と重要な成果指標」「ガバナンスシステム」の4つの取り組みが実施されていることです。

デジタルガバナンス・コード2.0で以下のように具体的な認定基準が記されています。

項目 認定基準
ビジョン・ビジネスモデル 経営ビジョン及びビジネスモデルの方向性を公表している

戦略

設計したビジネスモデルを実現するためのデジタル技術の活用戦略を公表している

(デジタル人材の育成・確保、レガシーシステムに対する必要な対策の実施など)

成果と重要な成果指標

デジタル技術を活用する戦略の達成度を測る指標について公表している

ガバナンスシステム

経営ビジョンやデジタル技術を活用する戦略について、経営者が自ら対外的にメッセージの発信を行っている

特に重要な経営者の役割にはステークホルダー(株主、顧客、従業員など)との対話があり、ステークホルダーとの対話を積極的に行っている企業には資金や人材、ビジネス機会が集まる環境を整備していくとしています。

参照:デジタルガバナンス・コード2.0

DXが注目される理由

DXがここまで注目される理由は経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」に登場した「2025年の崖」にあります。

「2025年の崖」とは、既存システムの複雑化やブラックボックス化と経営改革に対する現場の抵抗が大きいという現代の課題を克服できなかった場合、2025年以降に最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると示したものです。

既存システムのブラックボックス化を解消しなければ、爆発的に増加するデータを活用しきれずデジタル競争の敗者になってしまいます。

また、多くの技術的負債(レガシーシステム)を抱え、業務基盤そのものの維持・継承が困難になる危険性もあるためDXが注目されています。

デジタイゼーション・デジタライゼーションとの違い

デジタルトランスフォーメーションとデジタイゼーション、デジタライゼーションはすべて「デジタル化」に関わる言葉です。しかし、「デジタル化」して、どのような影響や変化をもたらすかについては違います。

3つの使い方や意味は下記の通りです。

名前 意味
デジタイゼーション アナログ・物理データのデジタルデータ化
デジタライゼーション 個別の業務・製造プロセスのデジタル化
デジタルトランスフォーメーション

組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化

“顧客起点の価値創出”のための事業やビジネスモデルの変革

カメラの例をあげると以下のように言えます。

①デジタイゼーション

  • フィルムカメラをデジタルカメラに変えること。

②デジタライゼーション

  • 写真現像の工程がなくなり、オンライン上で写真データを送受信する仕組みが生まれる。

③デジタルトランスフォーメーション

  • 写真データを使った新たなサービスやビジネスの仕組みが生み出され、SNSを中心にオンライン上で世界中の人々が写真データをシェアするようになる。

引用:総務省 情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室 デジタル・トランスフォーメーションによる 経済へのインパクトに関する調査研究の請負

DX(デジタルトランスフォーメーション)が必要とされている理由

DXが必要とされている理由は以下の3つです。

  • 消費者の行動形態の変化
  • 既存モデルの変革
  • 少子高齢化に伴う人手不足

詳しく解説します。

消費者の行動形態の変化

1つめは消費者の行動の形態が変化したことです。デジタルツールが普及し、生活インフラとして定着したことで従来なかった製品やサービス・ビジネスモデルが次々と生まれています。

すでに一般的な購買手段となったネットショッピングでは、購入前に多くの情報が簡単に手に入るので商品の詳細や口コミ情報を確認してから購入する消費者が多いです。

また、消費者の嗜好の多様化によるニーズの細分化と、Webを活用することで大勢の顧客に広告や商品を見てもらえるようになったことでニッチ市場が拡大しました。

このような状況では、デジタルを活用できない企業は競争力を失うため、デジタル技術を活用しビジネスを生み出すDXが求められているのです。

既存モデルの変革

2つめは既存モデルの変革です。業務効率化を目指しデジタル化に取り組む企業は増えていますが、それが商品やサービスの均一化を生み出しています。

均一化によりサービスの機能や品質、ブランド力などの付加価値が薄れると消費者が商品を選ぶ基準が価格や量に絞られます。同時に製品のライフサイクルが短くなり、生産者の利益率が低くなります。

そのため、既存モデルの変革を行わないと、自社ブランドの生き残りが難しくなっているのです。

少子高齢化に伴う人手不足

3つめは少子高齢化に伴う人手不足です。日本では少子高齢化が進行しており経済に活力を生み出し社会保障を支える存在でもある生産年齢人口(15~64歳)は減少する一方です。将来的に人材の確保が困難になることは避けられないため生産性の向上が必要になります。

また、少ない労働力で多くの付加価値を生み出すには、資本を投入しなければなりません。古いシステムの保守に使っていた費用を、新しい技術に回すタイミングにきているのです。

デジタル技術を活用し場所にとらわれず働ければ、働きたいのに働けない人の助けとなり人手不足の解消につながります。

日本企業のDX成功事例18選

ここでは具体的な日本企業の成功事例を紹介します。

紹介する企業は経済産業省の「DX銘柄 2023」に選定された14社と、総務省の情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室が行った調査の成功事例4社です。

①トラスコ中山(卸売業)

DX銘柄2023の中でも最上位の「DX ─プラチナ企業2023-2025」に選定されたトラスコ中山は、生産現場で使われるあらゆる工場用副資材(プロツール)の卸売業を展開しています。

同社は「必要なモノを、必要な時に、必要なだけ」届ける“究極の問屋”になることを掲げ、社内の業務改革と供給網(原材料・部品の調達から販売に至るまでの一連の流れ)全体の利便性を高めました。

具体的には“置き薬”のように顧客の手元(製造現場)に必要になるプロツールを配備し、顧客が専用アプリで商品のバーコードを読み取って購入できるようにしました。また、担当者の経験と勘に頼っていた発注を在庫管理システム「ザイコン3」で行ったり、AIによる自動見積もり機能を開発したことで見積もりが数秒で完了するようになったそうです。

DX後は、利便性が増したことで顧客満足度が向上し、即納体制の強化や在庫管理の無駄と時間を削減、見積もり業務の時間削減ができました。

参照:総務省 情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室 デジタル・トランスフォーメーションによる 経済へのインパクトに関する調査研究の請負

②株式会社トプコン(製造業)

DX銘柄2023の中でグランプリに選ばれた株式会社トプコンは世界の人々が豊かに生活するために欠かせない「医(ヘルスケア)・食(農業)・住(建設)」の分野で社会的問題を解決しグローバルな社会貢献を行っています。

具体的には、医(ヘルスケア)ではかかりつけ医、ドラッグストア、眼鏡店で目の健康診断が行える仕組みを創り、眼疾患の早期発見と医療効率の向上に貢献しました。

食(農業)では、海外の現状もふまえた「農業の工場化」を進め、生産性の最大化に必要な農業機械の自動運転とデータを一元管理するサービスをサブスクリプションで提供しています。

住(建設)では、精密GNSS(衛星システム)を活用した建築機械の自動化システムを完成させ、3 次元計測技術やネットワーク技術と組み合わせて「建設工事の工場化」を実現。測量・設計・施工・検査の建設工事における全工程を一元管理し、生産性と品質の向上を達成しています。

参照:経済産業省デジタル トランスフォーメーション 銘柄 ─DX銘柄 ─ 2023

③味の素株式会社 (食料品) 

味の素株式会社は、世界一のアミノ酸メーカーとして食品事業とアミノサイエンス事業を中心とした幅広い事業を展開している企業です。同社では、2030 年までに10 億人の健康寿命を延ばし、環境負荷を50%削減するという目標を立てています。

そこで、世界的に塩分の過剰接種が深刻化しておりWHOでも減塩の取り組みが掲げられていることに着目し、おいしい減塩「Smart Salt(スマ塩)」プロジェクトを推進しました。

具体的には、シニア世代や減塩を自分ごとに捉えにくい若い世代に向けて、うま味調味料や風味調味料を使用した減塩レシピを発信しデジタルを活用した訴求を行いました。さらに、従業員教育や地域行政、流通との連携も実施したそうです。

国内で蓄積したノウハウを海外グループ会社でも展開した結果、取り組みを始めた2年前と比べ国内外で減塩製品の売上が伸びるだけでなく、国内での減塩実践者(製品購入者)を154万人増やすことに成功したそうです。

参照:経済産業省デジタル トランスフォーメーション 銘柄 ─DX銘柄 ─ 2023

④旭化成株式会社 (化学) 

旭化成株式会社はケミカル、生活製品、繊維、エレクトロニクス、医薬品、医療機器、住宅、建材などを扱い総合化学メーカーとして幅広い事業を展開する企業です。同社では、DXを「デジタル導入期」「デジタル展開期」「デジタル創造期」「デジタルノーマル期」の4つの段階に分けた「DX推進ロードマップ」、「Asahi Kasei DX Vision 2030」を策定し推進体制を強化しています。

従業員教育では、「4 万人デジタル人財化」を掲げグループの全従業員がデジタルリテラシーを身に付けるために、海外11 言語に対応した全従業員向けの自己研鑽型の教育プログラムを実施したそうです。

DX講演会やアプリ開発イベント等の開催、MI(AIなどを応用して材料開発の効率を高めるマテリアルズ・インフォマティクス)人財・データ分析人財コミュニティの形成・交流も盛んに行われ、DX化が進められています。

参照:経済産業省デジタル トランスフォーメーション 銘柄 ─DX銘柄 ─ 2023

⑤株式会社ブリヂストン(製造業)

タイヤ、化工品、運動用品事業を展開するブリヂストンでは主力事業であるタイヤの製造・販売において業界全体の売上高も営業利益率も年々低下していることが課題でした。

そこで、高付加価値のある新サービス「mobox」を欧州を中心に展開し、その後国内でも実施しました。

「mobox」はタイヤのメンテナンスをサービスとして受け取る新しいビジネスで、燃費の悪化や車両故障につながる空気圧の管理を月額で行います。顧客にとっては初期投資を抑えながら安心して使い続けることができ、途中で交換も可能なため顧客満足度が高いです。

同社では現在、欧州を中心に88万台の車両データが毎日、定時にリアルタイムで収集できるため、今後はタイヤ×タイヤデータ×モビリティデータを組み合わせた独自のアルゴリズムによるブリジストンのソリューションの提供を考えています。

参照:総務省 情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室 デジタル・トランスフォーメーションによる 経済へのインパクトに関する調査研究の請負

⑥株式会社LIXIL(製造業)

建材・設備機器の製造・販売とその関連サービス業を展開しているLIXILでは、「デジタルの民主化」を掲げデジタル基礎教育を提供しました。また、専門知識のない従業員が独自の業務ツールを開発するためのノーコード開発ツールを導入し、約2年で従業員が開発し稼働しているアプリ数は1500個に達したそうです。

他にもコロナ禍でオンライン消費が拡大するなど購買行動の変化に合わせて、デジタルを活用した顧客体験の向上と販売プロセスの効率化を進めています。

たとえば、オンラインでショールーム展示商品が見られる「LIXILバーチャルショールーム」や「LIXILオンラインショールーム」ではオンライン接客に加え、3Dで完成予想イメージや見積もりを即時提供できるため、顧客満足度が向上しています。

さらに、水漏れを検知し通知する可動式センサーや水道管が破裂した際、自動的に供給を遮断するデバイスの開発など新規事業も展開しています。

参照:経済産業省デジタル トランスフォーメーション 銘柄 ─DX銘柄 ─ 2023

⑦ヤマトホールディングス株式会社( 陸運業)

「宅急便」など各種輸送に関わる事業を展開するヤマトホールディングス株式会社では、収益・コスト面での構造改革を推進しており、その取り組みのためにデジタル戦略を活用しています。

具体的には、業務支援ツールの開発、活用による配送の効率化や配達品質の向上、データのリアルタイム連携により直前でのお届け日時・場所変更対応、置き配、返品対応の簡易化などECユーザーの顧客体験向上とEC事業者への価値提供などです。

さらに製品特性に応じて、+30℃~−120℃帯に対応する特殊な専用輸送資材を供給したり、極温度帯ではドライアイスではない冷媒も活用し、環境への負荷が少ないサステナブルな輸送を実現させています。

参照:経済産業省デジタル トランスフォーメーション 銘柄 ─DX銘柄 ─ 2023

⑧日本航空株式会社 (空運業)

 航空運送事業を中心に国内・海外旅行の企画販売、航空券の販売などを行う日本航空株式会社は、「新たな価値や最高のサービスを提供しCX(顧客体験)を最大化すること」「働き方を改革を通じてEX(働くことで得られる経験や体験)を最大化すること」の両面からアプローチすることで持続的な事業の好循環を生み出すことを目的にDXを推進しています。

航空業界が抱えていた国内線運賃の課題をシステム・サービス・制度の抜本改革を行うことで解決し、以下の内容を実現しました。

  1. 顧客にとってわかりやすいシンプルで合理的な運賃体系
  2. 国内線に乗継運賃を初導入
  3. デジタル技術に対応した最新のDX基盤を構築、ビジネスモデル変革

この改革で顧客の利便性を大きく向上させるとともに、業務プロセス改革による販売関連費用の効率化を達成したそうです。

他にもドローン・空飛ぶクルマのエアモビリティ事業を進めており、将来的には安全運航管理の仕組みを構築し、収益化することを目指しています。

参照:経済産業省デジタル トランスフォーメーション 銘柄 ─DX銘柄 ─ 2023

⑨ソフトバンク株式会社( 情報・通信業) 

ソフトバンク株式会社は、国内移動通信事業、国内固定通信事業、インターネット事業などを展開している企業です。同社では、「世界に最も必要とされる会社」を掲げ今まで築き上げた事業基盤とテクノロジーの力を基に、誰もが便利で、快適に、安全に過ごせる理想の社会の実現を目指しています。

すでに法人向けにネットワーク構築から、データセンター、クラウド、セキュリティ、AI・IoT、デジタルマーケティングに至るさまざまなソリューションを提供したり、SNS、決済、メディア、eコマースなどへ事業領域を拡大を図ってきました。

また、DXの取り組みのひとつである「デジタルワーカー4,000プロジェクト」(2019年4月開始)では、モバイルの契約登録にRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用することで登録業務の50%を削減するなど業務の効率化を実現しています。その結果、2022年の3月には約4,500人月相当の業務時間の創出に成功しました。

参照:経済産業省デジタル トランスフォーメーション 銘柄 ─DX銘柄 ─ 2023

⑩三井物産株式会社 (卸売業)

三井物産株式会社は、金属資源から化学品、食料と多種多様な商品を販売し多方面に事業を展開している企業です。同社では、幅広く保有している貴重なリアルのデータを獲得できる現場にデジタルの力を加え、コスト削減や売上増だけでなく新たなビジネスモデルの創出を目指しています。

その取り組みのひとつが社会課題である気候変動の解決に向けた「森林DX」です。

国が認証するJ-クレジット制度には森林を管理して正確なCO2 等の吸収量・固定量の算出が必要ですが、人海戦術での測量にかかる費用の高さから申請へのハードルが高くなっています。

同社は航空・衛星の測量データが使えると考え社有林で実践した算出データをもとに林野庁に働きかけ制度の改正に至りました。その結果、森林のCO2 等吸収量・固定量の算出からJ-クレジットの申請までを一気通貫でサービス提供できるようになりJ-クレジット売買の活性化に貢献しています。

参照:経済産業省J-クレジット制度

参照:経済産業省デジタル トランスフォーメーション 銘柄 ─DX銘柄 ─ 2023

⑪アスクル株式会社 (小売業)

アスクル株式会社は、OA・PC用品、文具・事務用品、生活用品などを販売する「eコマース事業」と、企業向け物流と小口配送業務などを行う「ロジスティクス事業」を展開する企業です。同社では、「最高の顧客体験の創造」と「革新的バリューチェーンの構築」を目指しDXによるサービス変革を行っています。

そのひとつが、中小事業所向けECと中堅大企業向けECの2つのチャネルを統合するプロジェクトで、取り組みが成功すればそれぞれの顧客にとって利便性が大きく向上するだけでなく、今までにない新しいビジネスモデルの創出が可能です。

物流とデータに関するプラットフォーム改革では、商品入荷、ピッキング、出荷の作業プロセスにおいて実行型AIロボットを導入することで人的負担の低減や生産性の向上を実現しています。

他にもDX人材の育成を積極的に行っており、社員の属性に合わせてリスキリングを進める教育プログラム、専門性の高い技術教育プログラム、データサイエンスプログラムを提供しています。

参照:経済産業省デジタル トランスフォーメーション 銘柄 ─DX銘柄 ─ 2023

⑫株式会社丸井グループ(小売業)

 不動産賃貸、債権回収、 総合ビルマネジメント事業を展開する株式会社丸井グループでは、企業として実現したい方向性として「インパクト」を掲げました。インパクトとは社会に与える影響や変化のことで、実現するための方法として「小売」「フィンテック」「未来投資」の新しい三位一体のビジネスモデルを推進し、知識創造型のビジネスへの進化を目指しています。

具体的な取り組みのひとつが、誰でも手軽にオンライン上で出店契約を完結できる「OMEMIE(おめみえ)」サイトです。店舗の魅力を高めるために初出店のテナント開発を行う上で、スタートアップ企業に向けて区画ごとの家賃を公開するなど透明性を高めました。

1日から出店可能な短期イベントから長期の常設出店に対応しているだけでなく、マルイスタッフが販売代行するオプションや敷金ゼロプランも用意した結果、出店までの交渉期間の短縮と生産性の向上につながっています。

参照:経済産業省デジタル トランスフォーメーション 銘柄 ─DX銘柄 ─ 2023

⑬株式会社りそなホールディングス(銀行業) 

りそな銀行、埼玉りそな銀行等を傘下に置く金融持株会社のりそなホールディングスは、中長期的な「持続可能な社会への貢献」と「自らの持続的な成長」の両立を目指しています。

DXの具体的な取り組みが「デジタル」と「リアル」の融合と金融デジタルプラットフォームの構築です。「デジタル」と「リアル」の融合ではデジタル技術を活用して銀行に行けない「会えないお客さま」との取引を拡大しています。

金融デジタルプラットフォームの構築では、「バンキングアプリの地域金融機関への展開」、「投資運用商品(ファンドラップ)の地域金融機関への展開」を実施しており、りそなグループの顧客だけでなく、地域金融機関や一般事業法人、地方公共団体などその先の顧客までをターゲットとして収益機会拡大を目指しています。

参照:経済産業省デジタル トランスフォーメーション 銘柄 ─DX銘柄 ─ 2023

⑭東急不動産ホールディングス株式会社 (不動産業)

都市開発事業、戦略投資事業、管理運営事業、不動産流通事業を展開している東急不動産ホールディングス株式会社では、「Digital Fusion デジタルの力で、あらゆる境界を取り除く」をDXビジョンに掲げ、資産と人財の価値最大化による新たな収益モデルの確立に取り組んでます。

コロナ禍で非接触型の接客に取り組んだことがきっかけで始まった、デジタルツインを活用したオンライン物件見学では、モデルルーム見学と同等と一部では同等以上の体験価値を提供しています。

具体的には、デジタル空間内でウォークスルー、家具表示非表示、視点高さ切り替えなど多彩なシミュレーションが可能になる機能です。

また、新規事業の創出では北海道ニセコでの朝一番のパウダースノーを滑る権利を、NFTとして販売する事業の開発に取り組んでいます。ニセコへ観光客誘致する施策のひとつで、地域振興・関係人口増加に貢献し、「ニセコ」の街全体の価値向上を目指しています。

参照:経済産業省デジタル トランスフォーメーション 銘柄 ─DX銘柄 ─ 2023

⑮日本交通株式会社(陸運業)

タクシー・ ハイヤー・ ドライバー派遣を行う日本交通株式会社ではドライバー不足、利用者の減少など厳しい事業環境がありました。そこで、2011年に日本初のタクシー配車アプリを自社で開発し、サービスを全国のタクシー会社に提供。業界全体のDXに大きく貢献しました。

DX前の車と顧客のマッチングサービスでは、位置情報が数十秒に1度しか更新されなかったためすれ違いが多くなっていましたが、独自開発したタブレットでは1秒ごとに更新され車の位置や向いている方向も分かるようになったことで、素早く最適な位置にいる車の手配が可能になりました。

サービスは年々進化しており、2020年には配車にかかる時間を前年の10分から5分へ短縮と劇的な成長をとげています。アプリを業務に活用する過程で、決済機能とデジタルサイネージを提供する「JapanTaxiタブレット」を生み出し新たな収入源(広告収入)となっています。

参照:総務省 情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室 デジタル・トランスフォーメーションによる 経済へのインパクトに関する調査研究の請負

⑯アルフレッサ株式会社(卸売業)

医療用医薬品、検査試薬、医療機器、栄養食品などの卸売業を展開するアルフレッサ株式会社では、もともと導入していた需要予測ツールの活用が進みませんでした。

原因は取り扱う医薬品は35万と非常に多く、膨大なデータと高度なプログラミング技術が必要なところで処理速度や操作性に課題があったことです。

そこで医薬品の出荷予測にAIを活用し、生命関連商品の欠品を出さないことを最優先に過剰在庫の回避を目指しました。過去3年間の出荷データをAI(Google Cloud Platformを基盤にした機械学習サービス)に学習させ出荷予測を行ったところ精度の向上および業務の効率化を実現

クラウドサービスのため処理速度が速く、プログラミング知識がなくても直感的に使えるユーザーインターフェース(UI)にすることで活用が進みました。

参照:総務省 情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室 デジタル・トランスフォーメーションによる 経済へのインパクトに関する調査研究の請負

⑰イオン(小売業)

総合スーパー、スーパーマーケット、ディスカウントストア事業などを展開するイオンは、アジアに約2万店と突出した店舗数を誇りますが、実店舗偏重でDX化が遅れていました。

そこで中国にDX会社を設立し、効果とリスクを検証してから日本に逆輸入しました。ライブ動画配信による通販、顔認証レジだけでなく見栄えのする照明の当て方といったノウハウを持ち込んだ結果、イオンモール幕張新都心で実施したライブ動画配信では視聴者の書き込みとともに注文が相次ぎました。また、スマートフォンを使ってレジに並ばずに決済できるサービス「レジゴー」の導入店舗を増加させ、店舗での顧客のレジ待ち時間の短縮を実現しました。

高まっている非接触ニーズに応えるため自分のスマートフォンを使えるアプリを開発中で、今後はクーポンやオススメ情報機能などの特典や販促機能を追加し、より楽しい買い物体験ができるようプロモーションを強化していくそうです。

参照:総務省 情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室 デジタル・トランスフォーメーションによる 経済へのインパクトに関する調査研究の請負

⑱関西電力(電気・ガス業)

発電事業を中心に熱・ガス供給事業、電気通信事業を展開する関西電力は2016年4月の低圧需要家向け電気の小売業参入が全面自由化したことを受け、選び続けてもらうため価格だけでなく高付加価値なサービスの提供を目指しました。

そこで、アナログの電力量計からスマートメーターへの移行を進め、顧客自身がWeb上の会員サイトから現時点での電気料金を確認できるサービスの開発・提供を実現電力利用状況について5つのパターンに分かれることがわかり、機械学習を使った高度分析技術を活用して1年間データを集めたことで予測精度の向上が達成できました。

生活リズムをお知らせする新しい事業は、離れて暮らしている高齢者を持つ家庭にとって異常時だけではなく平常であることを確認できる安心材料になると評価を得ています。スマートメーターからの情報活用は空き家にも適用できるため、高齢化・都市化が抱えるさまざまな問題の解決につなげていく考えです。

参照:総務省 情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室 デジタル・トランスフォーメーションによる 経済へのインパクトに関する調査研究の請負

中小企業のDX成功事例11選

次に、日本の中小企業が行ったDXの成功事例を11社紹介します。

①株式会社クリスプ(飲食業)

カスタムチョップドサラダ専門店「CRISP SALAD WORKS(クリスプ・サラダワークス)」を都内で22店舗(2023年10月現在)運営する株式会社クリスプでは、通常の店頭での注文受付からモバイルオーダーアプリの導入を行いました。

店頭で注文を受けていたときは商品を提供するまで顧客を待たせていましたが、スマホから来店前に注文・決済が可能になったため効率的な時間の活用ができるようになりました。その結果、現場スタッフの作業時間が一日90分短縮できたそうです。

さらにアプリ注文では顧客単価が8%アップ、待ち時間短縮による顧客の来店頻度向上と売上の増加にもつながりました。グループ会社のカチリ社では、飲食店向けのモバイルオーダー運用ソリューションを開発、販売に取り組んでおり、アプリを活用した飲食業界全体の生産性向上を目指しています。

参照:総務省 情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室 デジタル・トランスフォーメーションによる 経済へのインパクトに関する調査研究の請負

②有限会社ゑびや(飲食業・小売業)

有限会社ゑびやは創業150年の老舗飲食店です。DX前のゑびやは単価は800円、グルメサイト評価は2.86、会計はそろばんという状態でした。そこで「当たり前」のことをすれば儲かるという考えから生産性向上、粗利向上と、労働時間などのコスト削減に取り組みました。

具体的には、店頭に定点カメラを設置し通行人の数や来客数を、画像解析カメラ・来客予測AIシステムなどを使って測定。これに天気予報などのデータを反映させ、来客予測を実施した結果「的中率95%超」を実現しました。このツールは売上分析、顧客属性分析、天候などの外部要因分析、通行量・入店率・売上の昨対比がわかる機能があり7年かけて開発したそうです。

AIを活用した来客予測を、食材発注や仕込み、勤務シフト、販売促進に活かせるようになった結果、2012年からの5年間で客単価3.5倍、売上5倍、利益率10倍にまで向上、2019年には2012年と比べ約90%の食品ロス削減に成功しました。

参照:総務省 情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室 デジタル・トランスフォーメーションによる 経済へのインパクトに関する調査研究の請負

参照:経済産業省 中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き

③株式会社ヒサノ(運送業)

機械器具設置工事や一般貨物自動車運送事業を行っている株式会社ヒサノは、業務の属人化やブラックボックス化に対する漠然とした課題感を持ちながらも、相談したIT企業の横文字が理解できず改革が進まずにいました。

しかし、IT経営の専門家であるITコーディネータと対話することで、5年後に総合物流業者として九州全域をカバーするという経営ビジョンを明確化できました。目標に向かった取り組みとして行ったのが、デジタル技術を活用した業務変革です。

たとえば、従来の「横便箋」と呼ばれる紙冊子のみでの運送、配車、人員配置の管理は相当のノウハウが必要なため属人化しており事業の継続のリスク要因になり得る状況でしたが、クラウドシステムの活用で誰もがどこからでもできるようになりました。

その結果、受注のスムーズ化や、複数拠点間の融通が可能になり含めて会社全体での業務最適化が実現したそうです。

参照:経済産業省 中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き

④株式会社久野金属工業(製造業)

株式会社久野金属工業自動車をはじめとする複雑・高精度プレス加工の製品を開発から量産まで一貫して対応している企業です。同社では、IT活用は行っていましたが工場の自動化、IT化には至っていない課題がありました。

改善に必要なデータは常に出ていたため、自動収集したデータを分析することで稼働率の向上と人件費の抑制につながりました。また、金型設計者はデータをクラウド上で管理できテレワークが可能になったそうです。

他にもマイクロリンクと同社で製造業向けIoTクラウドサービスを開発し、初期費用0円から始められるIoTクラウドサービスとして販売しています。今後はマイクロリンクとして「初年度100ライセンス、3年目までに500ライセンス」という目標を設定し、サービスの販売を加速させていく方針です。

参照:総務省 情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室 デジタル・トランスフォーメーションによる 経済へのインパクトに関する調査研究の請負

⑤株式会社IBUKI(製造業)

木型の製造販売企業として創業し射出成形用金型の設計・製造を行っている株式会社IBUKIは、2014年に株式会社O2に買収、グループ化されました。そこから金型製造の優れたノウハウを最大限に活用した経営改革、AI 技術を活用した品質の確保、向上の自動化など新しい技術の導入を積極的に行いました。

具体的な取り組みのひとつが、ベテラン職人の頭の中にあるさまざまな知識や情報をデータ化し蓄積する作業です。ここで得られたデータを生かして新規ビジネスである金型工場の各種 IT サービスをはじめ、金型の作業プロセスや管理などのシステムを販売しました。

他にもAIの活用では新規の注文に対し過去の実績から最適な情報を簡単に探せるようになったり、自社で作成したシステムの活用でデータ連携とペーパーレス化を進めています。今後はさらなる工場のデジタルデータ化に向けて収集が難しい緻密データの蓄積に取り組んでいくそうです。

参照:IPA中小規模製造業の製造分野における デジタルトランスフォーメーション(DX)のための事例調査 報告書

⑥株式会社ウチダ製作所(製造業)

大手自動車メーカ向けにプレス加工部品の製造販売を行っている株式会社ウチダ製作所は、外注している300tクラスの高難易度プレス金型の価格高騰と設計から製造、仕上げまでとなると中小企業には難しいという課題がありました。

そこで300tクラスの高難易度プレス金型の設計から製造、仕上げまで行うため企業連合をつくり、高難易度プレス金型の製作事業を行いました。具体的には、企業連合の強みを生かした「金型共同受注サービス」を始めました。提携する金型工場の設備にIoTデバイスを取り付けることで稼働状況をクラウド上で把握でき仕事量の予想が可能なため、仕事量と設備能力に応じて最適な工場が選択できる仕組みです。

企業連合のメリットは設計から仕上げまでの全体で最適化を図り、設備の稼働率を上げられることにあります。地元の企業だけでなく地理的に離れた金型工場とも連携を図れることで、デジタル技術を活用した「つながる工場」を実現したそうです。

参照:IPA中小規模製造業の製造分野における デジタルトランスフォーメーション(DX)のための事例調査 報告書

⑦マツモトプレシジョン株式会社(製造業)

空気圧制御部品や自動車部品などを製造するマツモトプレシジョン株式会社は、DXの講演会で知識を得たことで漠然とした危機感が正しい危機感に変化し、生産性向上と経営改善に取り組みました。具体的な目標として社員の手取り収入の3%アップと生産性の130%向上を掲げ、ヘッドハントによる人材確保や体制整備、意識改革を行っています。

その過程で、産学官連携で開発されたCMEsを他社に先駆け導入し、自社の業態をシステムに合わせるようにしてDXを進めました。CMEsとは中小企業が非競争領域の共通業務について、低コストで高品質なシステムを利用できるよう開発された共通業務システムプラットフォームです。同社が得たシステム導入のノウハウなどを公開することで地域中堅・中小企業の生産性向上にも貢献しています。

参照:経済産業省 中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き

⑧碌々産業(製造業)

機械工具類の輸入販売業として創業し汎用のマシニングセンタを製造する碌々(ろくろく)産業は、納品した機会の高頻度故障と設備の耐用年数が10年と長いことで顧客との関係性が途切れてしまう課題がありました。そこで、AI(Machine Dr.)の活用によるサービスの拡大とより高度なAI活用のためのデータ収集を開始しました。

AIの活用では、機械のあらゆる部位にセンサーを設置したことで36 項目のデータの記録と専用のクラウドへのアップロードができるようになりました。その結果、同社の技術者が遠隔で確認し原因究明と使い方の指導につながった以外にも、コンサルティングサービスの提供が可能になったのです。

AI活用のためのデータ収集では、たとえば工具の異音を機械学習することで工具破壊の予知が期待されており、さまざまな使用環境での音データを集めています。通信分野やAI開発に関して他社との協業やデジタル化推進人財の確保がDXの成功につながっています。

参照:IPA中小規模製造業の製造分野における デジタルトランスフォーメーション(DX)のための事例調査 報告書

⑨木幡製作(製造業)

計測・制御機器老舗メーカとして船舶向け計器などを製造する木幡製作所は、将来的に受注が下降していく傾向があり、老舗という強みだけでは差別化が図れないと考え個々の顧客に対するサービスの模索を始めました。

そこで保全業務のようなメンテナンス経費はコスト削減の対象にされやすく業界自体も人材不足の状況にあることに着目し、計器の遠隔監視に取り組みました。具体的には計器の遠隔監視が可能な「IoT 圧力計」の開発と、既に取り付けてあるアナログ式計器を IoT化できる「後付け IoT センサ・無線通信ユニット」の開発です。

また、IoT 圧力計を活用して医療に進出し医療用酸素ガスの残量監視システムを医療機関20社に提供しました。他にも呼吸疾患リハビリ用の呼吸筋力測定機器の製品化するなど市場開拓を行っています。

参照:IPA中小規模製造業の製造分野における デジタルトランスフォーメーション(DX)のための事例調査 報告書

⑩JAむなかた(農業)

農業経営、営農指導、農産物直売事業、金融、燃料事業などさまざまな業務を展開するJAむなかたは、新規就農者の多いいちご農業での若手の栽培技術向上と指導者が現地に行かなければ指導ができないことによる頻度の減少が課題でした。

そこでIoTを使った栽培ナビゲーションを導入し、温度、湿度、土壌水分、土壌温度、CO2濃度、日射量などのデータを自動取得、分析できるようにしました。その結果、長年の経験や勘を頼りにしていた農作業をデータに基づいて実施できるようになりました。

ベテラン農家と若手農家のデータ比較から、若手はいつどんな作業をすればいいのかわかるようになったと同時に、遠隔での指導が実現したことで指導機会の増加にもつながったそうです。収入面では若手だけでなくベテラン農家の収益も10アール(1アール=1000㎡)あたり平均80万円の増加となり、地域全体の増収を達成しました。

参照:総務省 情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室 デジタル・トランスフォーメーションによる 経済へのインパクトに関する調査研究の請負

⑪株式会社GA technologies(不動産)

不動産売買や賃貸、マンション投資などを行っている株式会社GA technologiesは資料や契約書、電話・FAXなどが多く使われているアナログな業界なため、顧客もアナログにならざるを得ない状況が続いていました。

そこでIT技術を活用して、オンラインでの内見予約とスマートロック導入によるスマートフォン操作での施錠や解錠ができるシステムを構築し、スタッフが立ち会う手間の削減と自由な時間に内見できることでの顧客体験の向上を実現しました。

不動産管理会社の業務をデジタル化したことで、月に約10万本の電話と約6.3万枚のFAXの削減に成功。不動産投資用ローンの申込・審査をオンライン化する業務支援システムを提供したことで、金融機関・不動産会社・顧客の間の煩雑なやり取りを減らし業界全体のDX推進につなげました。

参照:総務省 情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室 デジタル・トランスフォーメーションによる 経済へのインパクトに関する調査研究の請負

海外企業のDX成功事例4選

ここでは海外企業のDX成功事例を4社紹介します。

①銀泰百貨(中国:小売業)

大手老舗百貨店の銀泰商業グループが展開する百貨店の銀泰百貨では、百貨店の同質化やECの普及による顧客の購買行動の変化から業績が低迷している課題がありました。

2017年にAlibaba社に買収されたことをきっかけに取り組んだDXでは、会員の購買情報、商品の販売情報、物流などのデータが連携、活用されていなかったところからオンラインとオフラインを融合した「ニューリテール」の新業態へ転換しました。

2019年にはライブコマースによる商品販売、接客のデジタル化を行い、コロナ禍には販売員が自宅で配信し接客を行うようになりました。人気販売員の配信は1日平均1.5万人に視聴され、店舗での半年間の接客人数に達しただけでなく、1日の売上金額が店舗での2週間分に相当することもあったそうです。

他にもあらゆる情報のデジタル化を行った結果、2020年にはデジタル会員数が2,000万人になり、前年と比べて倍増と大きな成果が得られました。

参照:総務省 情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室 デジタル・トランスフォーメーションによる 経済へのインパクトに関する調査研究の請負

②Audi(ドイツ:自動車)

自動車販売を行っているAudiでは都心で暮らす顧客に向けて都心部でのショールーム開設を目標にしていましたが、従来の大型店舗での実施と異なり限られたスペースのため展示できる車の数が少ないという課題がありました。

そこで、仮想技術等を使って約400平米と従来のショールームの3/1の広さにした革新的な自動車ショールーム「Audi City」を2012年からオープンしました。

「Audi City」では、マルチタッチテーブルやタブレットを活用し色や構成をカスタマイズした車を店内の大型スクリーンへ投影して車の画像や動画を確認できるだけでなく、VRによる内装の確認と新たな顧客体験を提供しています。

その結果、ロンドンの「Audi City」では従来のショールームと比べ売上70%増加、利益30%増加、オプション装置の売上も20%増加。車を購入した顧客のうち65%は試乗せずに決めており、90%は新規顧客という成果が得られました。

参照:総務省 情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室 デジタル・トランスフォーメーションによる 経済へのインパクトに関する調査研究の請負

③McCormick&Company(アメリカ:食品業)

スパイス、調味料ミックス、調味料およびその他のフレーバー製品の製造・販売・流通を行うMcCormick&Companyは、自社の調味料を使ったレシピをお勧めする新サービス「FlavorPrint」を立ち上げました。

「FlavorPrint」は、オンラインでユーザーが食習慣や食べ物の好き嫌いに関する20個の質問に答えると、そのデータを基にユーザーの好みにあったレシピをお勧めするサービスで、「料理版Netflix」と言われるほど成功を収めました。

他にも自社が保持している調味料のデータをAIを活用して分析し、新しい調味料ミックスを生み出す「ONE」プラットフォームを構築しました。「ONE」を活用することで新製品の開発にかかる時間を従来の3/1に短縮できただけでなく、ユーザーに好まれるレシピを効率的につくれるようになったそうです。

参照:総務省 情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室 デジタル・トランスフォーメーションによる 経済へのインパクトに関する調査研究の請負

④Netflix(アメリカ:情報通信業)

世界最大級の動画配信サービス事業を行っているNetflixは、従来の来店型ビデオレンタルビジネスからサブスクリプション制の無店舗・郵送型DVDレンタルサービスへ変革を行いました。

その結果、店舗に出向く必要性や高額の延滞料金の支払いなどのユーザーの不便さを解消し顧客満足度の向上につながりました。2007年には動画配信サービスを開始しPCで視聴する動画配信が主流の中、韓国企業のLGと提携しテレビでVODを実現する機器を開発。2020年12月のユーザー数は2億人とさらなる増加に成功しました。

今後は映画会社が運営する映像配信に競り勝つことを視野に入れ、「オリジナル映画」の配信コンテンツに注力しています。

参照:総務省 情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室 デジタル・トランスフォーメーションによる 経済へのインパクトに関する調査研究の請負

DX(デジタルトランスフォーメーション)のメリット

ここからはDXのメリットを3つ紹介します。

業務効率化および生産性向上

1つめは業務効率化および生産性の向上です。
DXは、社内向けの「守り」と顧客や社会全体など社外に向けた「攻め」に分けて解説されることがありますが、生産性に関しては両面で高めることが可能です。

守りの面では、デジタル技術を活用して社内の業務過程を見える化すると同時に自動化も行い労働投入量を減らします。
攻めの面では、生産性を高めつつ付加価値を大きくします。 また、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用して業務を自動化すれば、処理速度が上がると 同時にヒューマンエラーも抑制できるので品質の向上につながります。

レガシーシステムからの脱却

2つめはレガシーシステムからの脱却です。レガシーシステムとは技術的負債とも言い換えられ導入から時間が経った旧型のシステムを指します。

レガシーシステムは、保守・運用の担い手が不足しているため安定的に稼働できなくなる恐れがあるだけでなく、維持管理費も高額化しています。
さらに、この先新しいデジタル技術を導入しても連携が不可能で、限定的なデータ活用しかできないでしょう。
つまり、DXを推進しレガシーシステムからの脱却することはコスト削減、安定的な稼働ができるだけでなく新しいデジタル技術を活用することによってさまざまなサービスや商品を生み出す可能性を生むのです。

新しいビジネスの創出

3つめは新しいビジネスの創出です。企業が生産性を向上させ、市場における競争力を高めると新たなビジネスを生み出す機会が広がります。

DXの基本が「ITなど進化したデジタル技術を浸行き渡らせることで人々の日常をすべての面でより良い方向へ変化させる」という概念から生まれており、新たなサービスや製品で人々の生活を豊かにすることが最大のメリットでありDXの最終的な目標です。

DX(デジタルトランスフォーメーション)のデメリット

ここではDXのデメリットを解説します。

会社全体の協力を得る必要がある

DXの実現には、全社的な仕組みや仕事の流れの見直し、状況次第では組織やアプローチの仕方などの根本的な見直しが必要です。

そのために、部門だけではなく全社的にDXへの理解を図ることが重要です。これには経営陣が全社に対してDXの実現を強く打ち出す必要があります。目標設定や予算の確保も重要なミッションです。

DX推進プロジェクトを情報システム部門主導で進めることに対して問題があるわけではありません。全社的な目標ということを経営陣の公約とすることが重要です。

既存システムの見直しや移行は大掛かりな作業になる

DXの取り組みを進めるうえでの課題は「人材不足」と答える企業が一番多いですが、次に多いのが「費用対効果が不明」ということです。

DXで「人員を何名削減できる」などの定量効果は測りにくく「さらに正しい経営判断が可能」「顧客の動向が分かる」などの定性的な効果を求めて導入することになります。定性的な効果を評価して投資を決める基準がないと、導入に踏み切れない場合もあるでしょう。

「対効果」を全く考えない場合であっても、システム自体の刷新には多大なコストが必要となり、実施当初はDXは赤字部門になります。 足元だけの収益を考えた場合、デメリットに見えます。

結果が出るまでに時間を要する

DXを実現するためには、一般的に3年~5年程度の期間が必要です。

DX推進を始めたものの期待したほど効果が上がらずに、プロジェクトを止めてしまう企業もありますが、短期間ではDXを実現できる企業はないということを念頭に、目標達成に向けた施策の実施を継続することが重要です。

また、ITツールを導入するまでをゴールとしたのでは、業務効率化は達成できません。DXの意味や目的を正しく理解し、長期的に取り組みましょう。

DX(デジタルトランスフォーメーション)における課題

「DXを会社で進めよう!」と思っても簡単にDX化できない企業は多いでしょう。

ここではDX化を進めるにあたっての課題を紹介します。

課題 具体的な内容
人材確保が難しい DXに詳しく、ITの知識も豊富な人の確保が難しい
DXに対する知識不足 DXに対するビジョンや経営戦略の不足
費用の増加 戦略的なIT投資(資金・人材)ができない
正しい費用選定 IT関連費用の80%は現行システムの維持管理

DX(デジタルトランスフォーメーション)推進を成功させるポイント

次に紹介するのはDX化を進める際のポイントです。下記表にまとめたポイントをおさえてDX化を進めましょう。

ポイント 具体的な内容
目的を明確にする 業界や置かれている状況によってDX推進を行う目的は様々
一貫性を持ったDX化体制を構築 DX推進を専門とする部署を立ち上げ、社内から適切な人材を配置

経営トップによる社内全体を巻き込んだ改革

社内全体の意識を変えていくことが必要
IT人材の確保と育成 経営トップの直轄や部門を超えて動けるDX推進チームとしてIT人材を配置

 

まとめ

この記事では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の事例について紹介しました。DXとは、デジタル化を利用して、会社全体の働き方をよくすることです。

世界中でDX化が進んだことで課題が解決され、効率化や収益の増加に成功している企業がたくさんでてきました。

DX化に進めるにあたっては、莫大なコストがかかるため億劫になっている企業はたくさんあるでしょう。しかし、今後の市場で生き残るにはDXは避けて通れないものになっており、日本の経済や未来を発展させるためにDX化が必要とされています。

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